仕事を見つけようと努力する傍ら、私は毎晩毎晩色んなお国の人と遊び歩いていた。
ほとんど教会員ではなかったので家族が知ると心配したかもしれないが。ハウスメートとも遊んでいたし
たまに週末は教会員とパーティーもしていた。
ハワイとカナダでは本質的な違いがある。ハワイは知らない人にでも挨拶はキスとハグから始まるが、カナダでは目もあわせてくれない。そんなに違いに気が付いたのはしばらくあとになってからなので、ブランドンいわく私はおかまいなく全ての人、そしてワードの全ての男性にしゃべりかけていた、と後々私の印象についていっていた。もちろんこれは誇張である。土台、ブランドンの私の最初の印象は、”うるさい、しゃべりすぎ、気に障る”、と後々いっていた。人生楽しくて何が悪い、と私を遊び人と決め付けていたブランドンを脇目に毎日夜遅くまでどんちゃか遊びまくっていた。
そんな能天気な私でも仕事を見つけて実際に働くうちに一体これが自分の本当にしたいことなのか、という厳しい現実にぶつかった。日本に帰ったほうが将来のためにいいのではないだろうか。あれは12月16日のことだった。日本帰国計画をほぼ決定した私は携帯の契約も止めて、一応最後の確認として断食をすることに。あれはとても寒い寒い日曜日だった。正餐会で祈る私にはっきりとカナダに残るようにといわれた。そしてその日に私は日曜学校教師としての責任をうけ、なんと初めてブランドンが私を誘ってくれた。思い返せばなにかのサインだったかもしれないがこの時の私にはさっぱりピンと来ていなかった。
ブランドンいわく、もちろん私のことが気に入ったから誘ったらしいが私は違う受け取りからをしていた。
”外国から来ていて、家族もいなくて寂しいだろうから、クリスマスに家族との食事にこないか?”と誘ったブランドンに対して、”ああ、ありがとう、でも多分仕事が入ってるよ”、と答えた私の心の中では、”どうせ外国人で家族も友人もいなくて寂しくてかわいそうだからうちによんでやるよ”、といわれた気がした。そんな同情は必要ないなあ、と思った私にはそんな誘いはすぐに記憶のそこにしまわれていった。
本人は一応デートというか、個人的に誘ったつもりだったらしい。
この日、私はハウスメートにこういっていた、”日本に帰らないことに決めたけど、何故か私は来年の春か夏に日本に一度帰ってまた戻ってくるといわれている気がする。でもどうせヴィザが切れてする9月には日本に帰るので一体何故そんな必要があるのかはさっぱりわからない。別に日本や家族が恋しくてしょうがないわけでもない” 実際私はしょうしょう狐につままれたような気分であったが、あまり深く考えないようにした。
さて、日曜学校の教師として召された私には同僚がいて、彼も日本帰還宣教師だった。ちなみにうちのワードには偶然にも3人も札幌帰還の宣教師がいた。4人も日本の宣教師が集まるなんて小さな小さな世界だ。そんなんで日曜学校を支える日本帰還宣教師という目にみえないつながりができあがっていて時折期間宣教師同士で一緒に座るようになっていた。ブランドンの隣に座ったときに話が盛り上がって実はレッスンなんてそっちのけで二人で話していたが、そのあたりはブランドンはどちらかというと、私の愚痴の聞き役で、なにかしら気に食わないことがあるとブランドンに話して自分はけろっとすっきりして他の人と遊びに出かけるというのが私の毎日だった。2~3人の人とデートにいったが特に何もなく。いやあ、やっぱりハワイの褐色の肌が懐かしいなあ、とぼやくことが多かった。
日本つながりで日本食の食事会や寿司パーティーがあり、そんな折はブランドンに伝えていた。そんな中、ブランドンが、”まなちゃんはカルガリーの文句ばっかりいっていて(かわいそう)だからどこかにつれてってあげる”、ということで誘ってきた。あれは1月の21日のことだった。動物園にいってレストランへ、二人の時間はむしろ穏やかで心静かなものだった。真冬のカナダの動物園は動物と人間が五分五分くらいの人気のないものだった。やっぱり、寒い。おやつとしてバッグからごそごそとイチゴポッキーをだしたブランドンを今でも覚えている。私は鈍感、というか男の人と出かけることは特にデートだとは思ってもおらず、ブランドンとレストランで、”これはデートだよ”、と本人に言われて、へ~、と思った。私の反応をみてブランドンは、は~、と深いため息をついていた。その週の土曜日には一緒に韓国マーケットで買い物。次の日には二人でもちぱるを作る(ブランドンの得意料理)そして月曜日には家庭の夕べ。次の週の水曜日にはKoiというレストランで食事のあとInkehrtという映画を見に行く。私は新しい友達ができた、とうきうきしていた。
その週にブランドンに家族との食事に招待されたときは軽く返事したものの、あとから悩んだ。そのあたりにはあきらかに遊びにいく、というよりは二人でデートに出かけている、という雰囲気になっていたからだ。後から聞くと、ブランドンも誘ったもののそうとう後悔して、私が断ってくれればと思ったらしい。そもそも洗濯物を実家でしなくてはいけなくて、どうせ私も連れて行けば一石二鳥と思ったらしい。緊張しつつブランドンの実家にいくと、以外とみんな親切で緊張も解けた。食事の後映画を見ているうちに私たちははじめ手をつないだ。何故実家でなんだろう?と後から考えたが、目撃したブランドンの両親はちょっとショックを受けていたようだ。その後の質問が何故か鋭くなっていた。
これが私たちの始まりだった。ここからはとんとん拍子でものは進んでいき、バレンタインデーの当たりにはラブラブになっていた。